IT業界のはなし

【実体験】フリーランスエンジニアの現実と不安について


本記事は会社からの独立を検討中の会社員の方、フリーランスエンジニアの実態について知りたい方向けに書かせていただきました。

今現在、私自身がフリーランスのエンジニアとして活動していますので、かなり生々しいというか実態に即したものになっていると思います。

なお、本記事では準委任契約に基づいて企業に常駐(orリモート勤務)しているタイプのフリーランスエンジニアを念頭に書いています。

請負で個人営業しながらノマド的な働き方をしているフリーランスを想定すると、記事の内容的に仕事の取り方や実情が若干ズレるかもしれません。(思想的には大差ないですが)

参考にしていただければ嬉しく思います。

フリーランスの末路・やめとけと言われる理由

フリーランスって、向いている人にとっては天国だと思うのですが、向いていない人にとっては地獄だと個人的には思います。

人によって向き不向きが激しいので、フリーランス最高!orフリーランスは厳しいから避けるべき!というように普遍的な正解を出すことは難しいです。

ここでは、一般的にフリーランスはやめとけ!という文脈で語られるものについて、個人的な経験を踏まえてフリーランスの実態を解説します。

孤独感


フリーランスと会社員の違いとして最も大きいのは所属組織の有無です。

現場での仲間意識とか会社に所属していることによって安心感を得ている場合は、フリーランスが辛くなるケースはあると聞きます。

現場によって温度差はありますが、やはり会社員とビジネスパートナーとの間で壁はあります。

私個人としては、会社から自分の人生の方向性に影響を及ぼされる方がストレスなので、むしろフリーランスのほうがいいのですがそこは価値観の差ですね。

また、会社にキャリアの方針をある程度決めてほしい場合も会社員のほうがいいと思います。

フリーランスの場合は案件を自らの責任において戦略を立てて選択していく必要があります。

ちゃんと市場調査しながら、最適な選択をしないと最悪将来的に仕事が全くできなくなる可能性すらあります。

常にどうすれば生き残れるかをストイックに考え続けなければならないので、これが苦痛な場合はフリーランスをやっていると病んでしまうかもしれません。

ハングリー精神の有無が影響するため、最も向き不向きが出る部分だと思っています。

事務処理が大変


確定申告が代表的なものですが、フリーランスになると会社員であれば不要な事務処理がたくさんあります。

もちろん税理士などのプロに頼るのも手ですが、自分でやろうとすると慣れるまでは辛いと思います。

私はそれほど苦ではないのですが、国とか市役所から郵便物が突然やってきて調べものに時間を浪費するということは、ちょくちょくあります。

知らないと10万円単位で損することもありますので、とにかく面倒くさがらずにちゃんと調べることが重要です。

最近の会計ソフトは本当によくできていて、簿記がわからなくてもなんだかんだで何とかなります。

初年度の確定申告を乗り切れば、次年度以降は要領がわかって少しづつラクになると思います。

調べる手間を考えれば、思い切って簿記3級を取ってみるのもアリかもしれません。

公的保障が薄い


会社員と違ってフリーランスは公的な保証が薄いため、病気のリスクは大きいです。

例えば病気やけがで長期間休業することになった場合、会社員は健康保険から傷病手当が支給されます。

しかし、フリーランスは一切ありません。

その他、社会的信用のなさや退職金がないなど、会社員にはないいくつかのデメリットがあります。

しかしそれらは対策があって、基本的にはカバーすることが可能です。まとめると以下の通り。

  • 雇用保険が消滅、傷病手当なし
    → 民間の所得補償保険に加入(掛け捨て、月額保険料3000~4000円くらいのもので十分。掛け金には税制優遇あり。)
  • 厚生年金が国民年金に切り替えとなる(年金の二階部分が消滅)
    → 個人型確定拠出年金(iDeco)の掛け金上限が正社員よりも大きくなるため活用。掛け金に税制優遇があり。終身保険が欲しいなら国民年金基金に加入。
  • 退職金がない
    → 小規模企業共済基金を積み立てる。掛け金に税制優遇があり。受取り時の税金は退職金扱い。
  • 健康保険の料金が高い。
    → 副業などで要件が満たせるなら文芸美術国民健康保険組合に加入。もしくは、法人化(士業のプロに相談必須)。
  • 社会的信用が低下(ローンが組みにくい、クレジットカードが作れない、賃貸が借りれない。)
    → 3年分の確定申告があれば大体行ける。個人事業主向けのクレジットも最近出てきた。賃貸はエージェントが福利厚生で仲介サービス優遇を提供していることも。

ただし、唯一社会的信用だけは、個人事業主になった直後の対策がありません。住宅ローンなど借金は会社員のうちがオススメです。

最新動向として、厚生労働省が2021年9月1日に省令を改正するため、フリーランスのITエンジニアやWebデザイナーも国の労災保険に加入できるようになります。

年齢が上がると継続が難しい?

  • 少子高齢化により年齢要件は緩和傾向。それに伴い、近年は特に50代ITフリーランスが増加している。
  • 生き残っている高齢フリーランスは、年齢以外の部分で優位性を確保して競争力を維持している。
  • 現場レベルでも年齢だけで足きりにするところばかりではないため、最終的に生き残れるかは人物本位。
  • とはいえ、傾向として加齢による市場価値の低下は免れないため、個々人で生存戦略は必要。

会社員・フリーランスといった形態を問わず、年齢が上がると求人数は減少します。(転職しづらい)

実際問題として、年齢に上限がある求人もありますし、特に若手が多いベンチャーでは同年代と働きたいという心理があるため年齢が高いと不利です。

特にフリーランスは正社員と違って決裁権を持つことはレアであるため、基本的には一プレイヤーとしての評価を受け続けます。

高年齢化した時に、現場でプレイヤーを継続できるのか、という点は大きな焦点となります。

もしくは、経験を積んでフリーランス向けのマネジメント案件を取りに行くかですね。

とはいえ、少子高齢化で労働者人口自体が減ってきているので企業側もえり好みができなくなってきています。

現場レベルでは、本来本社に戻して管理職になる年齢層のエンジニアであっても、現場プレイヤーの人手が足りてないためにあえて続投を打診されているケースはよく見かけます。

実際、近年は50代のフリーランスエンジニアも増加してきています。

【調査レポート】50代のフリーランスエンジニア直近2年で1.6倍 - レバテック・プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000261.000010591.html

従来、フリーランスは若い人でないとやっていけないイメージがありましたが、少しずつ変わってきています。

私のフリーランスの知り合いでも年配の方は意外といます。

生き残っている方の戦略としては、技術で圧倒的に尖ったスキルを持つ、マネジメント能力を磨く、特定分野の業界に特化するなどが王道ですね。

あと、教育するのが上手い年配エンジニアさんなんかも生き残ってます。

発注する側としては、ちゃんと成果物をあげてくるのに加えて周りの若い社員のレベルまで上がるとなると、年齢関係なく発注したくなるという。

若手と同じ土俵で競争になれば、勝ち目はないので年齢ではない部分や経験、人脈で競争力を持ち得るかがカギになってくるのではないかと思います。

ちなみに、そのあたりの事情はエージェント企業の営業担当者に複数聞いてみました。

聞いた内容をまとめると、案件数自体が年齢に従って徐々に減っていくのは事実であるものの機械的に年齢だけでアウトにする現場ばかりではないそうです。

そのため、最終的にフリーランスとして生き残れるかどうかについては個々人の力量による、という回答が多いです。

また、確かに若い人しか無理な現場はあるが、結局一人で受注できる仕事の数には限界があるため受けきれない部分の仕事量が減ってるだけで実質問題ない、という営業の話も聞いたことがあります。

とはいえ、大きな傾向として加齢による人材価値の低下は避けられません。

全く仕事がなくなるというわけではありませんが、継続的なスキルアップや営業ルートを構築するなど戦略的に立ち回る必要はあると思います。

不景気時にクビ・安定性が低い

  • 経験があれば、クビになったところで次の案件は簡単に見つかるので正直困らない。
  • 人脈がない場合は、エージェント企業に営業代行してもらえば安定的に仕事を確保できる。
  • ただし、スキルレベルが低いと特に不況時に案件獲得が困難になり、クビにもなりやすい。

フリーランスの安定性を一括りで語るのは不可能で、実態は人によると思います。

ただ、フリーランス=不安定という意見を見ると、フリーランスエンジニアに限って言えばリスクを過大に見積もりすぎだと思うことは多いです。

ある程度経験のあるエンジニアであれば、不況時でも常に企業側がエンジニアを探しているのでクビになったところで大して困りません。

(リーマンショック時ですらそうだったと当時を知るエンジニアには聞いています)

フリーランスの場合、その時々で儲かっている企業を渡り歩けるなら収入も安定しますが、渡り歩けるように普段から努力しておく必要はあります。

案件が選べる立場になりたいなら、得意な言語が最低一つあって基本設計工程から単独でカバー可能なレベル、技術選定などの経験があれば尚可といったところかなと個人的には思っています。

人脈形成とキャリア戦略を考えるためのリサーチも非常に重要です。

ただ仮に人脈形成が不十分でも、10~15%程度のマージンを許容するならエージェント企業に営業行為を丸投げできますので再現性は高いです。

会社員として余程の高給取りでない限り、エージェントを挟んだとしても会社員以下の年収になることはまずありません。(特に東京、名古屋、大阪などの大都市圏)

大抵は参画中の案件が終わりそうになると、契約中の顧客から別の案件へのスライドを打診されることが多いです。

そうでなくても、契約終了前に営業したら2週間もあればほぼ次の仕事は決まります。

なので、仕事がない期間というのは意図的に作らないとまずありえません。

とはいえコロナで一瞬大変になった時期を観察していると、ロースキル層(未経験、実務経験1~2年程度、低需要スキル持ちなど)の技術者は案件獲得に苦労していました。

1人の枠に30人くらいの応募があったという話も聞いて驚きましたね。。。

不況になると、スキルの低い層から契約を切られていくし応募要件も難しくなる傾向はあります。

現場に入った後も、スキルが低いことが露呈したり、人格面で問題があると契約は更新されず簡単にクビになります。そこは正社員と違って本当に厳しいです。(そういう人を見たことある)

逆に単独で業務遂行でき、上流工程から下流まで抑えられれば不況でも引く手あまたです。

特に需要の多いレアスキル持ち技術者は、企業間で取り合いになるので単価が跳ね上がります。

そのあたりはフリーランスで一括りにするのは無理で、あくまでも人物本位となります。

フリーランス化することによる年収の変化

  • フリーランスエンジニアは多くの場合、独立で年収は上がる。
  • エージェント経由なら月の売上50~70万(税込)のレンジに収まることが多いものの、もっと稼ぐ人も全然いる。
  • 個人的な感覚では、会社員時代の1.5倍くらい売上があれば継続はできると思う。
  • フリーランスの相場は、東京とそれ以外の地域で大きな格差があるため要注意。

会社の取り分が無くなるため、基本的に年収は増えることが多いです。

ただ、大手企業で相当上の方まで出世している場合などは、元の待遇が良いので独立しない方がいいケースもあるかと思います。

もし会社員時代と入ってくるお金があまり変わらないなら、健康保険料の上昇や保証が薄くなった部分への対応があるためお金の面では独立しない方がいいです。

一カ月当たりの売上は、相手先の予算や商流、本人のスキルなどに左右されますが、エージェント企業経由ならば50~70万円(税込)のレンジに収まることが多いと思います。(ただ、これよりはるかに高い人も結構いるのでピンキリ。東京だと月100万円とかも見かける。)

もろもろの税金などを差し引いて、売り上げの75%程度は手取りになると考えて良いです。

さらに、会社員には存在しない税制優遇や経費による節税がフリーランスにはありますので、実際の額面よりも可処分所得は増えます。

そのあたりは勉強しながらうまくやると良いです。

しかも、現場で実績を出していれば単価交渉で有利になるため、頑張り次第で年収はさらに伸びていきます。

ちなみに、フリーランスは会社員の2倍稼いでトントンという話はよく出回っていますが、フリーランスエンジニアに限って言えば雇用リスクが極端に低いため、1.5倍程度で十分継続できると思います。

初年度は、エージェント経由で仕事を受けつつ会社員時代×1.5倍の売上を目安にスタートして、焦らずに努力しながら少しづつ伸ばしていけばよいと思います。

とりあえず、大手のレバテックフリーランスあたりに登録しておいて、案件紹介を受けてみてみるのが鉄板ですね。

フリーランスになる前に相談してみて案件があるか確認するのが安全です。

私自身、レバテックさんには度々お世話になっています。

会社員として昇給を目指すよりも、フリーランスとして手取りを増やしていくことの方がはるかに簡単です。

商流を切り替えるだけで全く同じような仕事をしていても月10万円以上伸びたりします。

ただし、フリーランスエンジニアの単価相場には地域特性があり、全く同じレベルの仕事でも東京と地方では20万円前後の差があります。その点は注意が必要です。

地方だと50~60万円くらいの案件が多く、東京だと60~70万円が多い印象です。減額されない、下限となる労働時間も地方の方が10~20時間程度長くなる傾向があります。

仕事の取り方

仕事が来る経路としては、以下のような営業ルートがあります。

  • エージェント
  • 過去の取引先から直接声がかかる
  • フリーランス同士の横のつながり
  • インターネット(SNS経由など)

フリーランス向けの単発仕事を仲介しているサイト(ランサーズなど)は、手軽で良いサービスだとは思いますが価格低下圧力が大きいので個人的には使っていません。

フリーランスエンジニアは、企業常駐型の案件を多く扱う専門のエージェント企業(レバテックフリーランスなど)に営業行為を委託できます。単価もそれなりに高い額を確保できます。

人脈がない初期段階はエージェント企業経由で仕事を受け、現場で実績を積みながら人脈も拡大していくのが良いのではないかと思います。

フリーランスとして仕事をしていると、会社員と違って個人に信用が蓄積していきます。

現場である程度評価されていれば、人づてで直接個人的に仕事の話が来ることもあります。

そういったクローズな案件では、個人指名で来る分単価も上がりやすいです。

そういう風になってくると、徐々に自分で営業するようになるので自然とマージンを取られるエージェントからは距離を置くようになります。(自分はそんな感じでした。)



将来性について


IT業界自体が成長傾向であり、他業種でもIT技術者の需要が高まっているため今後もその流れは変わらないと思われます。

さらに、少子高齢化で労働人口が減少することを考慮すれば、ITフリーランスへの需要は今後も堅調に推移すると推測しています。

近年の職種別求人倍率で見るとIT技術者は全職種中トップで常に安定しています。

転職求人倍率レポート - doda
https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/

また、もっと具体的な調査として、経済産業省のIT 人材需給に関する調査(平成30年)があります。

IT 人材需給に関する調査(平成30年)- 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

この資料の中では、先端IT人材が不足する一方で、従来型IT人材は余る可能性があることが示唆されています。

今後、レガシーな技術を主戦場にしている技術者はキャリアチェンジする必要に迫られる可能性があります。

需要が上がる人材もいれば下がる人材もいるので、今後は年収が二極化するかもしれません。

また、需給バランスへの影響として、近年はGoogleなどの影響なのか新卒学生の流入が増えています。

しかし、それで供給不足が解消するかと思いきや、新卒流入を考慮した試算でも将来的に16.4 万人~78.7 万人程度は技術者が不足する見通しです。
(2030 年の IT 人材の需給ギャップ予測の試算・基本的なケース)

まとめ

以上、フリーランスとしての経験をシェアさせていただきましたが、いかがだったでしょうか?

正社員として実務経験が3年程度あれば、フリーランス化のリスクはそれほど高くはないと個人的には思います。

フリーランスから正社員に戻ることも可能ですので、片道切符でもありません。

自分の場合は、正社員として働いている状態でエージェントに連絡して、案件が確保できるという確信を持ってから退職してフリーランス化した感じです。

正社員の間から人脈を築いておいて人づてに案件が取れるならそれでも良いかと思います。

いずれにせよ、独立前に営業ルートを確保しておくことが重要です。

参考にしていただければ嬉しいです^^

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※写真:フリー写真素材ぱくたそ



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